本日は、ドローン(無人航空機)を活用したビジネスを展開されている事業者様、またはこれから参入を検討されている企業様に向けて、国土交通省より令和7年(2025年)3月に発表された非常に重要な文書、「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン 第一版」について、全内容を網羅して徹底的に解説いたします。

ドローンビジネスの収益性を飛躍的に高める「1人の操縦者による複数機の同時運航(1:N運航)」や「複数人によるさらに多数の同時運航(M:N運航)」は、かねてより社会実装が熱望されてきました。本ガイドラインは、その多数機同時運航を安全かつ合法的に行うための初の公式な指針となります。

本記事では、背景から具体的なリスク対策、必要となるマニュアル類に至るまで、当事務所の行政書士がプロの視点で余すところなく詳細に解説いたします。ぜひ最後までお読みいただき、貴社の事業拡大にお役立てください。


第1章:なぜ今「多数機同時運航のガイドライン」が必要なのか?背景と現状

1-1. ドローン社会実装の歴史と多数機運航への期待

無人航空機はすでに、農薬散布、空撮、測量、インフラ点検といった多様な現場で広く活用されています。迅速で場所を選ばない物流や画期的な映像取得を可能にするドローンは、日本が抱える人手不足や少子高齢化といった深刻な社会課題を解決し、新たな付加価値を創造する中核的な産業ツールとして期待を集めています。

2015年以降、幾度にもわたる航空法の改正が行われ、飛行の許可・承認制度、機体の登録制度、機体認証制度、そして操縦ライセンス制度などが次々と創設されました。同時に「ドローン情報基盤システム(DIPS)」の整備も進み、運航の拡大と安全確保の両立が図られてきました。これらの制度を活用し、2023年3月にはついに「レベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)」が実現。さらに同年12月には、無人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル3飛行)に求められていた立入管理措置の負担を大幅に軽減する「レベル3.5飛行」の制度が創設され、実運用がスタートしました。

このような追い風の中で、無人航空機の事業化をより一層推進するためには、「少人数で多数の無人航空機を運航することによる、運航の効率化と事業採算性の劇的な向上」が不可欠です。1人の操縦者が複数機を運航する「1:N運航」や、複数人でさらに多数を運航する「M:N運航」の普及拡大が強く求められていたのです。

1-2. 従来の課題とガイドライン策定の経緯

実はこれまで、航空法に基づく無人航空機の規制体系において、「多数機同時運航」に特化した明確な安全要件は定められていませんでした。一部の先進的な事業者によって多数機同時運航の実証飛行は行われていたものの、各事業者が現行の規制体系のもとで独自に安全対策を考案し、手探りで先行的な実証を行っている状況でした。

そこで国土交通省は、運航の安全確保を最大限に図りつつ事業化を推進することを目的に、2024年10月に「多数機同時運航の普及拡大に向けたスタディグループ」を設置。本ガイドラインは、このスタディグループにおける多角的な検討を経て策定されたものであり、安全に多数機同時運航を行うための具体的な要件を指針としてまとめた記念すべき第一版となります。

事業者が多数機同時運航を行う際は、本ガイドラインに沿って申請を行うことが強く推奨されており、記載されている対策一式を確実に実施することが求められます。

1-3. 現在の多数機同時運航と将来のビジョン(上限1:5の理由)

現在行われている多数機同時運航の実例は、「レベル3」または「レベル3.5」飛行が主流です。これらの運航では、空中リスクや地上リスクへの対策として、主に「機体に取り付けられたカメラの映像を人間が確認し、必要に応じて対応する」という手法(Human-in-the-Loopの運航)が採られています。

このカメラ監視を前提とした場合、機体数が増えれば人間の確認作業が増大するため、操縦者が担当できる機体数には自ずと上限が生じます。本ガイドライン(第一版)では、先行実証において最大1:5(操縦者1人に対し機体5機)の飛行を実施した事業者の見解などを重く受け止め、1:5が人間の視認を前提とした監視の限界に近いという実知見と、これまでの実績を踏まえて対象範囲の線引きを行いました。

将来的には、機体の自動・自律化(システムが主導し人間が監視するHuman-on-the-Loopの運航)が段階的に向上することで操縦者の負荷が軽減され、同時運航可能な機体数はさらに増加していくと想定されています。


第2章:本ガイドラインが想定する「運航の概念」と「申請フロー」

多数機同時運航の許可・承認を得るためには、まず自社の運航計画が本ガイドラインの対象範囲に含まれているかを正確に把握する必要があります。

2-1. 第一版の対象となる運航の範囲

多数機同時運航のルール整備の第一歩として、本ガイドラインでは現行の規制下で安全を実証できている範囲に絞り込んでいます。

【第一版の対象範囲の条件】 ・飛行レベル: 航空法に基づく飛行許可・承認制度における「レベル3」または「レベル3.5」飛行。 ・運航の形態: 各機体がそれぞれ独立した制御下で飛行する形態(独立形態)。 ・機体数の上限: 「1:5」まで(例:操縦者1人で5機、操縦者2人で10機など)。

【第一版の対象外となるもの】 ・ドローンショーなどの「レベル1」または「レベル2」に該当するユースケース。 ・機体認証と操縦者技能証明を活用したカテゴリーⅢ飛行等での多数機同時運航(令和7年度以降の検討対象)。 ・1機の先導機のみを制御し、他機が自動追随する形態の編隊飛行。

■注意点: 本ガイドラインは「1:5を超える飛行」や「レベル4飛行での多数機同時運航」を法的に制限(禁止)するものではありません。個別審査において十分な安全性を証明し、許可・承認を取得できれば飛行は可能です。

2-2. 飛行の許可・承認申請の画期的な新フロー

行政書士として最も注目すべき点は、本ガイドラインに準拠することで、「次回以降の同様の運航であれば1日程度での迅速な許可・承認(1日化)」が目指せるようになっている点です。

【レベル3飛行で多数機同時運航を行う場合】

  1. ガイドラインに即した個別措置の検討・過去のヒヤリハット確認。
  2. 従来通りの申請書類(対策一式を含む)の提出。
  3. 審査を経て許可・承認。
  4. 次回以降、同様の運航であれば、過去の許可承認の「文書番号」を記載することで1日化を目指すことが可能。

【レベル3.5飛行で多数機同時運航を行う場合】 レベル3.5特有の非常に重要なステップが追加されます。

  1. ガイドラインに即した個別措置の検討。
  2. 目視外飛行の申請書類に加え、対策一式が含まれた「運航概要宣言書」を作成し、航空局へ事前提出する。
  3. 航空局との対話を通じ、運航概要宣言書について事前合意を得た上で正式に申請を行う。
  4. 合意済みであるため、申請から1日程度で許可・承認。

この「運航概要宣言書」の作成および航空局との事前調整は高度な専門知見を要するため、当事務所のようなドローン法務の専門家が全面的にサポートすべき領域です。


第3章:多数機同時運航に求められる「厳格な各種要件」

1対1のドローン運航とは全く異なる次元のリスク管理が求められる多数機同時運航では、機体・操縦者・運航管理の3つの柱で高い要件をクリアしなければなりません。

3-1. 機体の要件

申請においては、「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」の以下の既存項目に適合することが大前提となります。 ・審査要領4-1-1(5):不具合発生時のフェールセーフ機能等の要件 ・審査要領5-4(1):目視外飛行における機体の要件(自動操縦システム、カメラ等による外部監視機能など)

その上で、運航リスクの検証に基づき、機体特性に応じた追加対策(自動衝突回避システムの搭載など)を施すことが求められます。

3-2. 操縦者に求められる知識・能力・訓練の要件

複数の機体を同時に監視・制御するという極めて高度なタスクを担うため、審査要領に定められた要件に加えて以下の具備が必須です。

① 知識の要件 ・多数機同時運航固有のリスクに関する知識(不具合の同時発生リスク、自社機体同士の接近・衝突リスクへの深い理解)。 ・1機運航と比べ、状況把握が散漫になりやすいというリスクの認識。

② 能力の要件 ・異常が発生した機体へのトラブルシューティングと、並行して飛んでいる「正常な機体の監視」を両立させる高度な処理能力。 ・複数機で異常が同時発生した場合でも、パニックにならずに対応できる能力。

③ 訓練の要件(机上訓練と実機訓練の両方が必須) ・同時運航する機体数を段階的に増加させながら、判断と操作に十分に慣熟すること。 ・緊急時における一瞬の判断と操作手順への完全な慣熟。

3-3. 運航管理(組織・システム)の要件

人間の能力には限界があるため、組織体制とシステムでカバーすることが本ガイドラインの核心です。

① 組織の要件 ・異常発生時に自組織が確実に対応できるか、事前に検証できていること。 ・操縦者だけでなく、直接関与者(交代要員、補助者など)の役割分担をあらかじめ明確化しておくこと。 ・安全情報を組織内外に共有できる体制の構築。

② 運航システムの要件 ・運航状況の把握や意思決定を容易にするため、直感的で視認性の高い操作画面や監視画面の設計とすること。


第4章:必読!想定される「3つの不安全事象」とボウタイ分析によるリスク対策

多数機同時運航の審査における最大の関門は、「固有のリスク」や「増大するリスク」の検証と対策です。本ガイドラインでは、学会でも提唱されている「ボウタイ(蝶ネクタイ)分析」というリスク分析手法を採用しています。

ボウタイ分析とは、リスクが顕在化した「不安全事象」を中心に置き、その引き金となる「脅威」とそれを防ぐ「予防策」を左側に、最悪の結末である「帰結」とそれを軽減する「回復策」を右側に配置して視覚化する手法です。ガイドラインでは、特に留意すべき3つの不安全事象を抽出し、徹底的な対策を提示しています。

【不安全事象①】運航監視において、機体や周辺の状況把握が不十分となる

【事象を引き起こす脅威と予防策】 ・脅威:情報が多く複雑・ワークロードの集中 予防策: 判断を容易にする画面配置。警告システムの導入。離着陸などの「人間が介入すべきタイミング」が重複しないよう作業量を分散させた飛行計画。 ・脅威:疲労の蓄積・コミュニケーションの煩雑化 予防策: 担当機数や連続フライト時間の上限設定。役割分担と専門用語の統一。 ・脅威:不具合の発生(単一または複数同時) 予防策: 不具合対応の権限を明確化し、別の直接関与者が担当することで、メイン操縦者が正常な機体の監視を継続できる体制づくり。

【事象発生後の最悪の帰結と回復策】 ・帰結:バッテリー低下による墜落・立入管理の不備・監視不足による墜落 回復策: 緊急着陸地点の設定と自動・手動での地点調整。パラシュートによる衝撃緩和。現地補助者による一般人への退避喚起。「監視が追いつかない場合、正常な機体を直ちに緊急着陸させ監視機数を減らす」などのフェールセーフ手順の実行。

【不安全事象②】多数機同時運航中の機体について制御不能等が発生する

【事象を引き起こす脅威と予防策】 ・脅威:操縦装置の処理能力超過・通信/GNSSの途絶や干渉・突風 予防策: 処理可能機数の事前検証。複数キャリアSIMや衛星通信による通信系統の冗長化。空域容量の検証。現地の気象特性・地形の把握と警告システムの活用。

【事象発生後の最悪の帰結と回復策】 ・帰結:墜落して人的被害や物損が生じる 回復策: 他の直接関与者による操縦権の奪取(操作介入)。緊急着陸とパラシュート展開。「墜落による被害リスクが高い機体にリソースを集中して対処する(優先順位付け)」という高度な回復策の実施。

【不安全事象③】同一運航主体が運航する機体同士が想定外の接近をする

1つの地域で多数機を運用する場合に特有の非常に危険な事象です。

【事象を引き起こす脅威と予防策】 ・脅威:通信/GNSS途絶・突風・飛行ルート設定の誤り 予防策: 複数機のルートに重複や接近がないかの綿密な確認。垂直・水平方向での十分な離隔距離の確保。設定ルートからの逸脱警告システムの利用。 ・脅威:機体の取り違え・操縦ミス 予防策: 「指差呼称(しさこしょう)」の導入。操縦画面への機体番号の明示。直感的なシステムUIの採用と異機種同時操作訓練。

【事象発生後の最悪の帰結と回復策】 ・帰結:自社の機体同士が衝突・墜落する 回復策: 接近に気づいた段階での手動回避操作。機体への「自動衝突回避システム」の搭載。墜落不可避時のパラシュート展開等による被害の最小化。

■重要:多数機運航の申請書類では、これら予防策・回復策が自社の運用体制にどう組み込まれているかを説得力を持って記述することが許可・承認の絶対条件となります。


第5章:多数機運航の申請で「追加で作成すべき5つのマニュアル類」

現行の審査要領で求められている標準的な「飛行マニュアル」に加え、以下の5種類のマニュアル類(または同等の記載事項を含む規程)を追加で作成・提出することが求められます。

  1. 運航マニュアル 直接関与者の選定要件、基本方針、各種基準(気象基準、機数上限など)。事故等発生時の「組織としてのエスカレーションルール」。
  2. 通常時対応手順書 日常点検、運航前の事前準備手順。具体的な多数機運航の操作手順(指差呼称のタイミングなど)。
  3. 緊急時対応手順書 多数機運航特有の異常事態及び緊急事態への具体的な対応フロー(誰が、どの機体を、どう操作・着陸させるか)。
  4. 安全管理規程 経営層も含めた安全方針、日常的なリスクマネジメント手法。事故・インシデント等に対する再発防止策の策定プロセス。
  5. 教育訓練・資格管理マニュアル 直接関与者への教育(多重タスク処理、ボウタイ分析の理解等)の実施要領。訓練の記録と評価方法。

これだけ膨大で専門的なマニュアルを事業者様単独でゼロから作成するのは、多大な時間と労力を要します。航空法規に精通した行政書士にご依頼いただくことで、確実かつスムーズに審査基準を満たすドキュメントの構築が可能です。


第6章:すでに始まっている!多数機同時運航の実施事例

本ガイドラインは机上の空論ではなく、すでに先行して実施されている実証実験の成功ノウハウが詰め込まれています。

【株式会社NEXT DELIVERYの事例】 レベル3.5飛行を活用し、山梨県や北海道などで共同配送を実施。1拠点から異なるルートで「1:2」の運航や、最大5拠点を結び「1:5」での配送を行う高度な運用を実現。

【KDDIスマートドローン株式会社の事例】 大規模太陽光発電施設の巡回警備において、レベル3飛行による「1:3」の運航を実施。立入管理区画が設定された3サイトを遠隔地から監視し、警備業界の人手不足解消に貢献。

【日本航空株式会社(JAL)の事例】 物流配送を想定し、レベル3.5飛行で「1:5」の運航を実施。道路横断や海上船舶往来の確認など、広域かつ複雑な環境下での同時運航を実証。


終わりに:多数機同時運航の実現へ向けて、行政書士が徹底サポートします!

ここまで、「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン 第一版」について徹底解説してまいりました。

ドローン1機に対して操縦者1人が張り付く従来のモデルから、「1人の操縦者が複数機を同時にコントロールする」多数機同時運航へのシフトは、ドローン事業の採算性(ROI)を劇的に改善し、本格的な社会実装・黒字化を達成するための不可欠なステップです。

しかしながら、その許可・承認を得るためのハードルは決して低くありません。特にレベル3.5での多数機運航を目指す場合、航空局との事前合意に向けた「運航概要宣言書」の緻密な作成、ボウタイ分析に基づく「リスク検証と対策の論理的な構築」、そして「5種類の専門的な追加マニュアルの整備」が必須となります。これらに不備があればビジネスチャンスを逃してしまいます。

当行政書士事務所では、最新の航空法規や本ガイドラインの深部までを完全に網羅・理解しております。

「多数機運航の要件を満たせるか不安だ」 「複雑なマニュアル作成を丸投げしたい」 「航空局との折衝をプロに任せて、自社は事業開発に専念したい」

そのような事業者様は、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。貴社のドローンビジネスが次のステージへと飛躍するため、複雑な許認可手続きから社内体制構築のコンサルティングまで、私たちが全力で伴走・サポートいたします!

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