第1回:ドローンを飛ばす前に!絶対に知っておくべき航空法の全体像
こんにちは。行政書士の連載ブログ、ドローン法規制解説の第1回です。
近年、テレビやインターネットの映像などで、ドローン(無人航空機)が活躍する姿を目にする機会が爆発的に増えました。自分でもあんな風に綺麗な空撮をしてみたい、ビジネスにドローンを活用して業務効率化を図りたい、と考えている方も多いのではないでしょうか。
ドローンは「空の産業革命」とも呼ばれ、空撮や農薬散布、測量、インフラの点検といった分野で既に広く利用されています。さらに今後は、都市部も含む物流事業や、災害時の迅速な対応、施設の警備への活用など、さらに多様な分野の幅広い用途に利用されることが見込まれています。多くの人々がその利便性を享受し、社会が抱える様々な課題を解決に導くことで、産業、経済、社会全体に大きな変革をもたらすことが期待されている、まさに夢のあるツールです。
しかし、ドローンを大空に飛ばすためには、決して避けては通れない「法律の壁」が存在します。連載第1回目となる今回は、なぜドローンにはこれほどまでに厳しいルールが設けられているのか、そして、ドローンを飛ばす上で絶対に知っておかなければならない「航空法」をはじめとする法規制の全体像について、徹底的に解説していきます。
第1章:なぜドローンに厳しいルールがあるのか?法律を守る意義と社会的背景
1. ドローンの特性と事故の重大なリスク
ドローンが急速に普及する一方で、ルールの整備が急がれた最大の理由は、ドローンが「上空を飛行する」という特殊な性質を持っているからです。重さのある物体が空を飛んでいる以上、ひとたび衝突や墜落といった事故が発生すれば、地上の人命や財産、あるいは他の航空機に対して、取り返しのつかない重大な被害を生じさせる可能性があります。
実際に、過去にはイベント会場などで人にドローンが墜落して怪我を負わせる事故や、飛行中の航空機に異常接近し、あわや大惨事になりかねない事態が発生しています。さらには、空港付近でドローンの目撃情報があったために、安全確認のため滑走路が一時的に閉鎖され、多数のフライトが欠航・遅延するといった、社会インフラに多大な影響を及ぼす事態も発生しているのです。
2. 操縦者が負うべき非常に重い法的責任
このような危険性をはらんでいるため、万が一事故を起こしてしまった場合に操縦者が負う責任は非常に重いものとなります。具体的には、以下の3つの責任を問われることになります。
| 責任の種類 | 概要と具体的な罰則・ペナルティの例 |
|---|---|
| 刑事責任 | 業務上過失致死傷などの重い刑事責任(懲役、罰金等)。航空法違反そのものに対する罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金など)も含まれます。 |
| 民事責任 | 民法に基づく損害賠償責任。人身事故や高額な物損事故の場合、個人の支払能力をはるかに超える莫大な金額になる可能性があります。 |
| 行政処分等 | 取得した技能証明(ドローンの国家資格)の効力取消しや最大1年間の効力停止、文書警告、口頭注意などの国からの処分。 |
3. 誰もが安全に空の恩恵を享受できる社会へ
ドローンの規制は、決してドローンの普及を妨げるためにあるのではありません。空という共通の空間を、有人航空機も含めて誰もが安全に利用し、社会全体がドローンの利便性を安心して享受できるようにするために作られたものです。社会や他人の安全を守り、自分自身が重い責任を負うリスクを避けるためにも、ルールを正しく理解し遵守することが、操縦者としての最大の義務です。
第2章:航空法の対象になるドローンとは?(100gの壁)
航空法においてルールが定められている「無人航空機(ドローン)」とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。航空法では、以下の3つの条件をすべて満たすものを無人航空機と定義しています。
- 航空の用に供することができる機器であって、構造上人が乗ることができないもの
- 遠隔操作、又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うこと)により飛行させることができるもの
- 重量が「100グラム以上」のもの
※人が乗らなくても航空機に近い構造や性能を持つものは「無操縦者航空機」と呼ばれ区別されます。また、紙飛行機のように遠隔操作できないものは該当しません。
重量100gの考え方と「模型航空機」に関する注意点
ここで最も注意すべきなのが「重量100g以上」という基準です。この重量には、ドローンの機体本体の重さに加えて、飛行に必要なバッテリーの重さが含まれます。ただし、プロペラガードなど、飛行に必須ではない取り外し可能な付属品の重量は含まれません。
では、重量が100g未満のトイドローンはどうなるのでしょうか。これらは航空法上、無人航空機ではなく「模型航空機」に分類されます。しかし、模型航空機であればルールを一切気にしなくて良いわけではありません。
| 機体の分類 | 重量の基準 | 主な適用ルール |
|---|---|---|
| 無人航空機 | 100g以上 | 航空法のすべての無人航空機ルール(機体登録、飛行空域、飛行方法など)が適用される。 |
| 模型航空機 | 100g未満 | 空港等の周辺や、高度150メートル以上の空域の飛行は規制される(事前の届出が必要)。小型無人機等飛行禁止法は重量に関わらず適用される。 |
第3章:航空法の全体像を掴もう!安全を確保するための3つの柱
航空法における無人航空機のルールは多岐にわたりますが、大きく分けて「機体登録」「飛行禁止空域」「飛行の方法」の3つの柱で構成されています。
1:機体登録の義務化とリモートID
100g以上の全ての無人航空機は、国の登録を受けなければ飛行させることができません。登録の有効期間は3年間です。
登録を行うと「登録記号」が発行され、機体の外部から確認しやすい箇所に表示する義務があります。さらに、一部の例外を除き、機体の識別情報を電波で発信する「リモートID機能」を備えることが義務付けられています。
2:飛行が禁止されている空域(場所)
以下の空域は原則として飛行が禁止されており、飛行させる場合は「特定飛行」として事前に国土交通大臣の許可を受ける必要があります。
| 飛行禁止空域 | 概要と注意点 |
|---|---|
| 空港等の周辺 | 空港やヘリポート周辺の進入表面等の上空。新千歳空港などの主要空港ではさらに厳格な規制あり。 |
| 緊急用務空域 | 災害発生時などに国が指定。事前の飛行許可があっても飛行不可(100g未満も不可)。 |
| 高度150m以上の空域 | 地表または水面から150m以上の高さ。海抜高度ではないため山間部での飛行に注意。 |
| 人口集中地区(DID) | 国勢調査に基づく人や家屋が密集している地域の上空。墜落リスクが高いため原則禁止。 |
3:遵守すべき飛行の方法(飛ばし方)
ドローンを飛ばす際は、以下のルールを必ず守らなければなりません。特定飛行に該当する場合は、事前の承認が必要です。
| 分類 | 具体的な飛行ルール |
|---|---|
| 絶対に守るべき義務 | アルコール・薬物の影響下での飛行禁止(罰則あり)、飛行前の安全確認、航空機や他ドローンとの衝突予防、他人に迷惑を及ぼす危険な飛行の禁止 |
| 事前承認が必要な特定飛行 | 夜間飛行、目視外飛行(モニターを見ながらの操縦含む)、人や物件から30m未満の距離での飛行、多数の人が集まる催し場所の上空飛行、危険物の輸送、物件の投下(農薬散布含む) |
第4章:新しい飛行形態の分類「カテゴリーⅠからⅢ」とは
航空法の改正により、無人航空機の飛行はそのリスクの高さに応じて3つの形態に分類されるようになりました。
| カテゴリー | リスク | 飛行の条件と必要な手続き |
|---|---|---|
| カテゴリーⅠ飛行 | 低 | 特定飛行に該当しない飛行(日中、目視内、DID外など)。航空法上の許可・承認は不要。 |
| カテゴリーⅡ飛行 | 中 | 特定飛行のうち、第三者が立ち入らないよう立入管理措置を講じる飛行。技能証明と機体認証があれば許可・承認が不要になる場合あり。 |
| カテゴリーⅢ飛行 | 高 | 特定飛行のうち、立入管理措置を講じない飛行(第三者上空でのレベル4飛行など)。一等無人航空機操縦士資格、第一種機体認証、毎回の飛行許可・承認が必須。 |
第5章:航空機の運航ルールと無人航空機の関係
ドローンを飛ばす人は、旅客機やヘリコプターといった「有人航空機」の運航ルールも理解しておく必要があります。
航空機とドローンが接近した場合、ドローン側が航空機に対して進路を譲る義務があります。航空機は速度が速く、コックピットから小さなドローンを発見して避けることは事実上不可能です。ドローン操縦者は、ドローン情報基盤システムを通じて事前に飛行情報を共有し、航空機が近づいてきた場合は速やかにドローンを地上に降下させるなど、航空機の安全を最優先にした回避行動をとらなければなりません。
第6章:航空法以外にも!注意すべき重要な法律とルール
ここまで航空法について解説してきましたが、ドローンを飛ばす上で関わってくる法律は他にもあります。
1. 小型無人機等飛行禁止法(警察庁管轄)
国会議事堂、首相官邸、原子力事業所、主要な空港など、国の重要施設に対するテロを未然に防止するための法律です。施設の敷地上空とその周囲おおむね300メートルの上空は飛行が固く禁止されています。
最も重要なポイントは、重量や大きさに関わらず100g未満のトイドローンもすべて規制対象になるということです。
参考資料:警察庁 小型無人機等飛行禁止法について
https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/index.html
2. 電波法(総務省管轄)
ドローンは操縦指示や映像伝送のために電波を使用しています。日本国内でドローンを飛ばす場合、日本の基準に適合していることを示す「技適マーク」が付いた機体を使用しなければなりません。産業用ドローンで特定の周波数(5.7GHz帯など)を使用する場合や、上空で携帯電話の電波を利用する場合は、国家資格や無線局の開局手続きなどが必要です。
参考資料:総務省 ドローン等に用いられる無線設備について
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/drone/
3. 地方自治体の条例や各種ルール
各自治体が定める条例により、都市公園や観光地の上空での飛行が独自に禁止されているケースが多数あります。航空法の許可を取っていても、土地の管理者の許可や条例の遵守は別途必要になります。
おわりに:ドローン操縦者に求められる知識とモラル
ここまで解説してまいりましたが、ドローンを大空に飛ばすためには、皆さんが想像していた以上に数多くの緻密なルールが定められていることがお分かりいただけたと思います。
しかし、これらの法律やルールは、ドローンを楽しむ人や活用する人を縛り付けるためのものではありません。誰もが安全に、そして安心して空という空間を活用し、社会を豊かにしていくために必要不可欠な共通の約束事です。
ドローンの性能がどれほど進化しても、最後に安全を担保するのは、それを管理し操縦する「人」の知識とモラルです。ルールを正しく理解し、安全な飛行計画を立て、周囲に配慮したフライトを行うことが、ドローン操縦者に求められる最大の責任です。
当事務所では、札幌をはじめとする北海道内でのドローン飛行許可・承認申請のサポートから、複雑な法規制に関するコンサルティングまで、事業者様のドローン活用を法務面からバックアップしております。手続きに不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。