「ついにドローンを買った!さあ、週末はどこに飛ばしに行こう?」 そんな胸の高鳴りを感じている皆様、はじめまして。ドローン法務を専門とする行政書士です。
近年、ドローンの性能は劇的に向上し、誰でも簡単に美しい映像を撮れるようになりました。しかし、それと同時に「空の法律」も毎年のようにアップデートされており、初心者の方から「結局、どこでどう飛ばせばいいの?」「許可って個人でも取れるの?」というお悩みが私の元へ数多く寄せられています。
この記事では、ドローンを初めて購入した方、あるいは購入を検討している方に向けて、2026年現在の最新ルールに基づいた「飛行許可申請」の基礎知識を徹底的に解説します。
第1章:ドローンを手に入れたら、まず「100gの壁」を知る
ドローンには、法律が適用されるかどうかの明確な境界線があります。それが「100g」です。
なぜ100gが重要なのか?
以前は200g未満が「おもちゃ(トイドローン)」扱いでしたが、2022年の法改正により、バッテリーを含む総重量が100g以上の機体は、すべて航空法上の「無人航空機」に分類されることになりました。
現在、人気の高いDJI製の軽量モデルなども、そのほとんどが100gを超えています。「小さいから大丈夫だろう」という油断が、意図せぬ法令違反を招く原因の第一位です。
飛行前の絶対条件:機体登録とリモートID
100g以上の機体を購入したら、飛ばす前に必ず行わなければならないステップが2つあります。
- 機体登録(DIPS 2.0): 国土交通省のシステムに、所有者情報と機体情報を登録します。登録すると「JU」から始まる登録記号が発行され、これを機体に表示する義務があります。
- リモートIDの搭載: 車のナンバープレートの電波版のようなものです。多くの最新機種には内蔵されていますが、古い機種や自作機の場合は外付けの送信機が必要です。
行政書士のアドバイス: 登録を怠って屋外で飛ばした場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という非常に重い罰則があります。「知らなかった」では済まされないのが法律の厳しいところです。
第2章:あなたが「許可」を取らなければならない理由
「自分の庭ならいいでしょ?」「山奥なら誰もいないし……」 そう思われるかもしれませんが、実は日本の空には「飛ばしてはいけない場所」と「やってはいけない飛ばし方」が網の目のように張り巡らされています。
これらを総称して「特定飛行」と呼びます。特定飛行に該当する場合、事前に国土交通大臣の許可または承認を得る必要があります。
1. 許可が必要な「場所」(空域)
- 人口集中地区(DID地区): 国勢調査の結果に基づき、人が多いと判断されたエリアです。札幌市中央区などの市街地はほぼ全域がこれに該当します。
- 空港周辺: 飛行機の離着陸を妨げないためのエリアです。空港から数キロ〜数十キロ離れていても該当することがあります。
- 150m以上の高さ: 有人機(ヘリや飛行機)との衝突を避けるためです。
- 緊急用務空域: 災害発生時などに一時的に設定される「絶対飛行禁止」エリアです。
2. 承認が必要な「飛ばし方」(手順)
- 夜間飛行: 日没から日の出までのフライト。
- 目視外飛行: モニター越しに操縦すること。FPVゴーグルを使用する場合もこれに当たります。
- 30mルール: 人や建物(第三者のもの)から30m以内の距離に近づく場合。
- イベント上空: お祭りやスポーツ大会など。
「初めてだし、近くの公園でちょっと練習したいだけ」というケースでも、その公園がDID地区内であれば、許可なしでは1cmも浮かすことはできません。
第3章:2026年の新常識「国家資格」と許可申請の関係
ドローンをこれから始める方が最も混乱するのが、「国家資格を取れば、許可申請はいらなくなるの?」という疑問です。
答えは「半分正解で、半分間違い」です。
国家資格(二等・一等)のメリット
現在、ドローンには「無人航空機操縦者技能証明」という国家資格があります。
- 二等資格を持っていると、DID地区での飛行や夜間、目視外飛行などの一部について、「カテゴリーⅡ」と呼ばれる条件を満たせば、毎回の申請が免除、または簡略化されます。
- 一等資格は、さらにリスクの高い「レベル4飛行(有人地帯での目視外自動飛行)」を可能にするためのものです。
しかし、空港周辺や150m以上の飛行、イベント上空などは、たとえ一等資格を持っていても個別の申請と審査が必要です。
行政書士のお悩み相談: 「国家資格を取ったからどこでも飛ばせる!」と思い込んで飛行し、警察の職務質問を受けてしまう方が後を絶ちません。国家資格はあくまで「技能の証明」であり、すべての申請を不要にする魔法の杖ではないことを覚えておいてください。
第4章:初めての許可申請、自力でやる?プロに頼む?
では、具体的にどうやって許可を取ればいいのでしょうか。方法は大きく分けて2つです。
方法A:自分で「DIPS 2.0」から申請する
国土交通省のオンライン申請システム「DIPS 2.0」を使えば、個人でも申請は可能です。
- メリット: 費用がかからない(申請手数料自体は無料です)。
- デメリット: 専門用語が多く、マニュアルの作成や機体情報の入力に膨大な時間がかかる。補正(やり直し)指示が何度も来ると、飛ばしたい日に間に合わない可能性がある。
方法B:行政書士に依頼する
私たちのような専門家に代行を依頼する方法です。
- メリット: 正確でスピーディ。複雑な「独自マニュアル」の作成や、自治体・警察への事前連絡のアドバイスも受けられる。ビジネスで使う場合、コンプライアンス面での安心感が大きい。
- デメリット: 代行費用(数万円〜)が発生する。
第5章:【地域別】北海道・札幌でドローンを始める際の注意点
私は札幌で活動していますが、北海道には広大な大地がある一方で、特有の注意点があります。
- 国立公園・国定公園が多い: 航空法とは別に、自然公園法などでドローンの持ち込みや飛行が制限されている場所が多いです。
- 冬の気象条件: 氷点下での飛行はバッテリーの消耗が激しく、墜落のリスクが高まります。また、雪の上での離着陸は機体内部への浸水(故障)を招くため、ランディングパッドの使用が必須です。
- 土地所有者の許可: 「空は誰のもの?」という議論がありますが、土地の所有権は上空にも及ぶと考えられています。航空法の許可があっても、勝手に他人の私有地や商業施設の上で飛ばすのはマナー違反(および民事上のリスク)です。
第6章:ドローンの可能性と、安全への責任
ドローンは、これまでの「当たり前」を塗り替える素晴らしいツールです。
- クリエイティブ: 映画のような絶景をSNSにアップする。
- ビジネス: 測量、点検、農業で効率化を図る。
- 社会貢献: 災害時に物資を運び、行方不明者を探す。
しかし、その素晴らしい可能性は、「空の安全を守る」という一人一人の責任の上に成り立っています。たった一人の無謀な飛行が、業界全体の規制強化につながってしまうこともあるのです。
最初の一歩を正しく踏み出すために
初めてドローンを手にした時の感動を、苦い経験に変えてほしくありません。 もし、 「自分の家がDID地区に入っているか調べてほしい」 「この飛ばし方で許可が必要か判断がつかない」 「仕事で使いたいので、万全な体制で申請を済ませたい」 といったお悩みがあれば、まずは私たち行政書士のような専門家に気軽にご相談ください。