ドローンをビジネスに導入する際、最初の、そして最大の壁となるのが国土交通省の「DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)」を使った飛行許可・承認申請です。
「画面を開いたけれど、専門用語ばかりで何を入力していいか分からない」
「何を入力するか調べているだけで、時間がかかってしまう」
現場の準備で忙しい事業者様から、当事務所へ寄せられるお悩みです。特に、全国の様々な場所で1年間ドローンを飛ばせるようにする「包括申請」は、多くの方が申請を行います。
この記事では、国土交通省および航空局が公式に発表している操作マニュアルや資料の内容だけに的を絞り、DIPS2.0で初心者が必ずつまずくポイントと、包括申請における絶対のルールを分かりやすく徹底解説します。
現場で活躍する事業者様が、思わぬ法令違反で罰則を受けることがないよう、正しい知識を身につけていただければ幸いです。
■ 1. そもそも「包括申請」とは何か?
ドローンの飛行許可申請には、大きく分けて「個別申請」と「包括申請」の2種類があります。
個別申請は、「いつ」「どこで」飛ばすかをピンポイントで特定して申請する方法です。一方、包括申請は「飛行の経路を特定しない申請」と呼ばれ、日本全国(または特定の都道府県内)において、1年間という長期間にわたり、何度でもドローンを飛ばすことができる非常に便利な申請方法です。
ビジネスでドローンを活用する方(空撮、屋根点検、測量など)のほとんどが、この包括申請を取得することになります。
ただし、国土交通省の資料によれば、包括申請ができる飛行形態は以下の4つに限られています。
・人口集中地区(DID地区)の上空の飛行
・夜間飛行
・目視外飛行
・人又は物件から30m以上の距離を確保できない飛行
逆に言えば、「空港等の周辺における飛行」や「地表または水面から150m以上の高さの空域における飛行」、そして「イベント(催し物)会場の上空での飛行」などは、どれだけ熟練したパイロットであっても包括申請で済ませることはできず、必ず場所と日時を特定した「個別申請」を行わなければなりません。
■ 2. DIPS2.0操作で初心者が陥る「4つのつまずきポイント」
国土交通省のDIPS2.0操作マニュアルに従い、実際に申請を進める上で多くの方がつまずくポイントを解説します。
【つまずきポイント1:アカウント開設と本人確認】
DIPS2.0を利用するには、まずアカウントを開設する必要がありますが、ここで「個人アカウント」と「企業・団体アカウント」のどちらで作るべきか迷う方が少なくありません。 法人の業務としてドローンを飛ばす場合は「企業・団体アカウント」を取得します。この際、法人としての本人確認として「GビズID」の連携が必要です。GビズIDを持っていない場合は書類の郵送等での本人確認となり、日数がかかってしまうため事前の準備が必須です。個人の場合はマイナンバーカードでの認証が最もスムーズです。
【つまずきポイント2:事前の「機体登録」と「操縦者登録」】
DIPS2.0で飛行許可の申請画面に進む前に、絶対に終わらせておかなければならないのが「無人航空機情報の登録(機体登録)」と「操縦者情報の登録」です。 特に包括申請を行うためには、操縦者に「10時間以上の飛行経歴」があることが国土交通省によって定められています。システム上で操縦者情報を登録する際、この飛行時間を正しく入力していないと、後の申請で包括申請の条件を満たしていないとシステムに判定されてしまいます。
【つまずきポイント3:リモートIDの登録漏れ】
航空法により、原則としてすべてのドローンにリモートID機器の搭載が義務付けられています。機体登録を行う際、機体に内蔵されているリモートIDの製造番号等をシステムに入力する必要があります。これを忘れたまま機体登録を完了させてしまうと、適法に飛ばすことができません(※一部の事前登録期間に登録した機体など、免除の特例に該当する場合を除きます)。
【つまずきポイント4:60分ルールの罠】
DIPS2.0のシステムには、個人情報漏洩のリスクを下げるためのセキュリティ保護機能が備わっています。国土交通省のマニュアルには「申請手続き中に60分以上操作を中断(何も操作しない状態)されますと、手続きのやり直しが必要になります」と明記されています。 マニュアルを読みながらゆっくり入力していると、途中でタイムアウトになり、せっかく入力したデータがすべて消えてしまうという悲劇が多発しています。必要な情報は事前に手元に揃えてから、一気に入力する必要があります。
■ 3. 包括申請の要「航空局標準マニュアル02」の絶対ルール
DIPS2.0のシステム上で包括申請を進めていくと、「安全を確保するために必要な体制」として、どのような飛行マニュアルを使用するかを選択する画面が出てきます。
ここで圧倒的多数の方が選択するのが「航空局標準マニュアル02(場所を特定しない申請用)」です。
この標準マニュアルを使用すると、自分で一から安全対策の文章を考える手間が省け、システム上で「はい」を選択するだけで申請が進むため、非常に簡単です。しかし、実はここに最大の罠が潜んでいます。
国土交通省が作成したこの「標準マニュアル02」には、「これを守るなら包括申請を許可しますよ」という非常に厳しい条件(遵守すべき事項)が記載されています。許可証を手にしただけで満足し、このマニュアルの中身を読んでいないと、知らず知らずのうちに航空法違反を犯すことになります。
国土交通省の「航空局標準マニュアル02」に記載されている、主な禁止事項とルールを抜粋して解説します。
【天候と現場の基本ルール】 ・風速5m/s以上の状態では飛行させない。 ・雨の場合や雨になりそうな場合は飛行させない。 ・十分な視程が確保できない雲や霧の中では飛行させない。 ・飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の「補助者」を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。
【飛行場所に関する厳格な制限】 包括申請の許可を持っていても、標準マニュアル02を使用している限り、以下の場所の周辺では飛ばしてはいけません。
・第三者の往来が多い場所や学校、病院等の不特定多数の人が集まる場所の上空やその付近。
・高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近。
・高圧線、変電所、電波塔及び無線施設等の施設付近。
【特定飛行のかけ合わせの禁止】 ここが最も違反が多いポイントです。包括申請の許可があっても、危険な飛行条件を「同時に」行うことは標準マニュアル02では飛行できません。
・人又は家屋が密集している地域の上空(DID地区)では、夜間飛行は行わない。
・人又は家屋が密集している地域の上空(DID地区)では、目視外飛行は行わない。
・夜間の目視外飛行は行わない。
つまり、「市街地の現場(DID地区)」で「夜間」にドローンを飛ばすことは、包括申請の許可を持っていても、標準マニュアル02を使用している限り法令違反となります。
■ 4. 標準マニュアルで対応できない場合の解決策
では、標準マニュアルでは対応が足りないといった状況で、業務としてドローンを飛ばさなければならない場合はどうすればよいのでしょうか。
解決策は2つあります。
一つ目は「独自マニュアルの作成」です。 DIPS2.0の申請画面で、航空局標準マニュアルを使用しない設定にし、自社の業務実態に合わせた独自の安全対策を記載したマニュアルを作成して国土交通省へ提出し、審査を受けます。具体的な代替措置を記載し、それが国の基準を満たしていると認められれば許可が下ります。
二つ目は「個別申請」への切り替えです。 包括申請ではリスクが高すぎると判断される飛行であっても、飛行する日時と場所を明確に特定し、その現場における安全対策図などを詳細に作成して「個別申請」を行えば、許可が下りる可能性があります。
いずれにしても、標準マニュアルの枠を超える申請は、DIPS2.0上での入力項目が格段に増え、要求される安全対策のレベルも跳ね上がるため、難易度が非常に高くなります。
■ 現場の準備に集中したい事業者様へ
ここまで、国土交通省の資料に基づき、DIPS2.0での包括申請のつまずきポイントと、航空局標準マニュアルの厳格なルールについて解説してきました。
ドローンの法律は毎年のように改正され、DIPS2.0のシステムもアップデートを繰り返しています。「マニュアルを読み込んでシステムと格闘する時間」は、本来のビジネスの利益を生み出す時間ではありません。
また、内容をよく理解しないままシステム上で「はい」を押し続けて許可を取ったとしても、実際の現場でマニュアル違反の飛行をしてしまえば、事業者としての信用を大きく失うことになります。
「DIPS2.0の画面を見ただけで嫌になった」
「自分のやりたい業務が、標準マニュアルで適法にできるのか分からない」
そんな時は、どうか一人で悩まずに、専門家である行政書士を頼ってください。
桑園みらい行政書士事務所では、北海道・札幌を拠点に、地元で頑張る事業者様のドローン法務を丸ごとサポートしています。面倒なシステム入力や複雑な独自マニュアルの作成を当事務所がすべて代行し、皆様が安心して「現場の仕事」に集中できる環境をお守りします。
ご相談は無料です。ドローン導入の第一歩でつまずいてしまった方は、ぜひ一度、当事務所へお気軽にお問い合わせください。安全で適法なフライトへの最短ルートをご案内いたします。