ドローンの安全で正しい活用法を学ぶ連載ブログ、第2回にようこそ。
前回の第1回では、ドローンを取り巻く航空法をはじめとする法規制の全体像と、法律を守る意義について解説しました。ルールを守ることが、自分自身と社会の安全を守るために必要不可欠であることをご理解いただけたかと思います。
さて、いざドローンを購入しようと家電量販店やインターネット通販を見てみると、手のひらサイズの数千円のものから、何十万円もする大型の本格的なものまで、数え切れないほどの種類が販売されています。自分の用途に合ったドローンはどれだろう、この機体を買ったらどんな法律の手続きが必要になるんだろう、と悩んでしまう方も多いはずです。
そこで連載第2回となる今回は、ドローン選びと法律を理解する上で絶対に知っておかなければならない最大の分岐点について解説します。それが「100gの壁」です。
ご自身のドローンが100g未満のトイドローンなのか、それとも100g以上の一般的なドローンなのかによって、法的に求められる義務や適用されるルールは劇的に変わります。小さいからおもちゃだろうと安易に考えていると、知らないうちに重大な法律違反を犯してしまう危険性があります。
今回は、航空法における機体の厳密な定義から、重量の正しい計算方法、そして100g未満と100g以上の法的な扱いの違いについて、徹底的に深掘りして解説していきます。
第1回【はじめてのドローン】航空法と法規制の全体像(100gルール・特定飛行)
無人航空機とは?航空法における定義
私たちが普段何気なくドローンと呼んでいるものは、法律(航空法)の世界では「無人航空機」という言葉で規定されています。しかし、空を飛ぶものすべてが無人航空機になるわけではありません。
航空法では、以下の3つの条件をすべて満たすものを無人航空機として明確に定義しています。
条件1:人が乗ることができない飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であること
単に人が座るための座席がないという意味ではなく、その機体の大きさやモーターの出力といった潜在的な能力から総合的に判断されます。人が乗って移動できる空飛ぶクルマ(eVTOL)などは、遠隔操縦であっても無操縦者航空機という別の分類になります。また、気球やロケットもこの定義から外れます。
条件2:遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの
プロポ(コントローラー)を使って電波で操縦したり、組み込まれたプログラムによって自動的に操縦を行ったりできる機能が必要です。手で投げて飛ばすだけの紙飛行機などは該当しません。
条件3:重量が100グラム以上のもの
最も重要であり、多くの方が頭を悩ませるのがこの条件です。航空法では、上記2つの条件を満たしていても、重量が100グラム未満であれば無人航空機から除外され「模型航空機」という別のカテゴリーに分類されます。
かつては200gだったボーダーライン
昔からドローンに興味があった方は、ドローンの規制って200gからじゃなかったっけ、と疑問に思うかもしれません。その認識は過去においては正解でした。
航空法に無人航空機のルールが新設された当初、規制の対象となる重量のボーダーラインは200g以上に設定されていました。しかし、2022年(令和4年)6月20日の航空法改正(機体登録制度の施行)に伴い、この基準が「100g以上」へと一気に引き下げられたのです。
なぜ半分にまで引き下げられたのでしょうか。
その最大の理由は、ドローンの急激な高性能化と小型化にあります。技術の進歩により、100g台の機体であっても強力なモーターや高画質のカメラ、GPSによる安定したホバリング機能を備えるようになりました。これにより、屋外でかなりの距離や高度まで安定して飛行できるようになり、利用者が爆発的に増加しました。
しかし、性能が上がって屋外を自由に飛び回れるようになった反面、突風に煽られて墜落したり、操縦ミスで人にぶつかったりといった事故のリスクも格段に高まりました。100g台であっても上空から落下してくれば地上の人や車に甚大な被害をもたらすおそれがあります。
このような実態と危険性を重く見た国は、航空機の航行の安全や地上の安全を確保するため、網羅的に規制対象を広げる決断を下しました。
現在、空撮用として販売されている屋外向けのカメラ付きドローンは、どんなに小型に見えても、そのほとんどが100g以上に該当すると考えて間違いありません。
「重量100g」の正しい計算方法
自分のドローンはカタログの仕様表に本体重量80gと書いてあるから、100g未満の模型航空機で規制対象外だ、と判断するのは少し待ってください。ここに初心者が最も陥りやすい法的な重量の罠が存在します。
航空法における無人航空機の重量とは、「機体本体の重量」と「バッテリーの重量」の合計を指します。
ドローンはバッテリーがなければ空を飛ぶことができません。そのため、飛行に絶対不可欠な動力源であるバッテリーを含めた重さで判断されるのです。カタログに機体重量(バッテリーを除く)80gと記載されていても、専用バッテリーが30gあれば、合計は110gとなり立派な無人航空機として扱われます。
一方で、「取り外し可能な付属品」の重量はこの計算には含まれません。具体的には以下のようなものが該当します。
・プロペラガード(プロペラを覆う安全カバー)
・カメラのレンズを保護するプロテクター
・後付けのランディングギア(着陸用の脚)
・機体に貼り付けたステッカーやデカール
計算の基準となるのは、あくまで飛ぶために必要最低限な「機体本体+バッテリー」の重さであることをしっかりと覚えておいてください。
100g未満と100g以上のルールの違い(比較表)
ここで、100g未満のトイドローン(模型航空機)と、100g以上の一般的なドローン(無人航空機)に適用される航空法のルールの違いを表にまとめました。
| 項目 | 100g未満(模型航空機) | 100g以上(無人航空機) |
|---|---|---|
| 機体登録の義務 | 不要 | 必要(DIPS2.0にて登録) |
| リモートIDの搭載 | 不要 | 原則必要 |
| 人口集中地区(DID)の上空 | 飛行可能 | 原則禁止(許可が必要) |
| 夜間飛行・目視外飛行 | 可能 | 原則禁止(承認が必要) |
| 人や物件から30m未満の飛行 | 可能 | 原則禁止(承認が必要) |
| 空港周辺・高度150m以上の飛行 | 原則禁止(届出が必要) | 原則禁止(許可が必要) |
| 緊急用務空域での飛行 | 全面禁止 | 全面禁止 |
100g以上の無人航空機に課せられる義務
本体とバッテリーの合計重量が100g以上となる機体をお持ちの場合、航空法による厳しいルールの対象となります。
- 機体登録の義務とリモートIDの搭載
全ての100g以上の無人航空機は、国の登録を受けなければ原則として空を飛ばすことができません。オンラインの「ドローン情報基盤システム(DIPS 2.0)」を利用して所有者や機体の情報を登録し、手数料を納付します。登録の有効期間は3年間です。
また、機体の識別情報を電波で周囲に発信するリモートID機能を機体に備え、作動させる義務があります。
参考リンク:国土交通省:ドローン情報基盤システム(DIPS 2.0) - 飛行禁止空域と遵守すべき飛行の方法
空港等の周辺、地表または水面から150メートル以上の高さの空域、人口集中地区(DID)の上空などは原則として飛行が禁止されており、国土交通大臣の許可が必要です。
また、空域に関わらず、夜間飛行、目視外飛行、人や物件から30m未満の距離での飛行なども原則禁止されており、事前の承認が必要となります。
100g未満のトイドローンに潜む巨大な落とし穴
100g未満の機体は航空法上、無人航空機からは除外され模型航空機に分類されます。そのため、面倒な機体登録や、人口集中地区での飛行制限などの特定飛行の規制は適用されません。しかし、だからといってどこでも自由に飛ばせるわけではありません。
空港等の周辺や高度150m以上の空域などで模型航空機を飛行させる場合は、事前に国土交通省への届出が必要です。
さらに重要なのが「緊急用務空域」です。大規模な火災や地震が発生した際、消防ヘリなどの救助活動の安全を確保するため、国は突発的に緊急用務空域を指定することがあります。この空域では、100g未満の模型航空機であっても飛行が完全に禁止されます。
重さを問わず適用される「小型無人機等飛行禁止法」の恐怖
100g未満のドローンを外で飛ばす際に、絶対に知っておかなければならない法律があります。それが、警察庁が管轄する「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(小型無人機等飛行禁止法)」です。
この法律の規制対象となる小型無人機は、航空法とは異なり「大きさや重さにかかわらず対象となり、100g未満のものも含まれる」と明記されています。
以下の重要施設とその周囲おおむね300メートルの上空では、飛行が固く禁止されます。
対象となる主な重要施設
・国会議事堂、首相官邸、最高裁判所、皇居など
・危機管理行政機関の庁舎、対象政党事務所
・外国公館(大使館など)
・防衛関係施設(自衛隊の基地、在日米軍施設など)
・指定された主要な空港(新千歳、成田、羽田、中部、関西、大阪、福岡、那覇)
・原子力事業所(原子力発電所など)
これらに違反して飛行させた場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という重い刑事罰が科せられます。おもちゃだからという言い訳は一切通用しません。
参考リンク:警察庁:小型無人機等飛行禁止法に基づく対象施設の指定関係
電波法や条例など、その他の守るべきルール
さらにクリアしなければならない法律は他にもあります。
- 電波法による「技適マーク」の確認
ドローンの操縦や映像の伝送には電波が使用されています。日本国内で電波を発する機器を使用する場合、日本の基準に合致していることを証明する「技適マーク」が付いている必要があります。海外のインターネット通販で安価なトイドローンを購入した場合、このマークが付いていないことがあり、そのまま使用すると電波法違反となります。
参考リンク:総務省:ドローン等に用いられる無線設備について - 地方自治体の条例や民法
多くの都道府県や市区町村では、独自の都市公園条例などを定めており、公園内でのドローンの飛行を重さに関係なく禁止しているケースが非常に多いです。また、他人の土地の上空には土地所有者の権利が及ぶため、勝手にトイドローンを飛ばせば権利侵害でトラブルになるリスクがあります。
おわりに:用途に合った機体選びとルールの明確化
今回は、ドローンの法規制における最大の分水嶺「100gの壁」と、100g未満の機体に潜む法律の落とし穴について解説しました。
これからドローンを始める方が、自身の用途に合わせてどちらの機体を選ぶべきかを整理してみましょう。
ケースA:家の中でのみ飛ばす、子供のおもちゃとして遊ぶ場合
この場合は100g未満のトイドローンがおすすめです。航空法の無人航空機には該当せず、家の中(屋内)であれば航空法や小型無人機等飛行禁止法の対象外となるため、安全かつ手軽に楽しむことができます(技適マークの確認は必須です)
ケースB:屋外で空撮したい、点検などの業務に使いたい場合
屋外で風に負けず安定して飛び、高画質な映像を撮影するためには、必然的に100g以上の一般的なドローン(無人航空機)となります。
機体を購入したら、飛ばす前に必ず国(DIPS 2.0)へ機体登録を行い、リモートIDを設定してください。そして、飛ばしたい場所が飛行禁止空域に該当しないかを確認し、該当する場合や夜間・目視外で飛ばす場合は、国土交通大臣から特定飛行の許可・承認を事前に取得する正規の手続きが必要です。
ドローンの世界において、知らなかったという言い訳は通用しません。自分の機体の重量を正確に把握し、ルールを守って安全に楽しむことが、大空を活用するユーザーとしての最大の責任です。
飛行許可の取得や関連法規の確認に不安がある場合は、専門家である行政書士にぜひご相談ください。
次回、連載第3回では、100g以上の無人航空機を屋外で飛ばす際に必ず直面する「飛行禁止空域」と「特定飛行のルール」について、さらに徹底的に解説していきます。お楽しみに。